週刊:日本近現代史の空の下で。

過去に向きあう。未来を手に入れる。(ガンバるの反対はサボるではありません)

天皇陛下が国民を統合し続ける理由:日本人という求心力は案外と脆い

「象徴天皇としてあり続けるためには、主権者である国民の理解や支持が必要であり、自ら積極的に動いて国民を統合していくことこそ天皇の役割だと考えているのでしょう」と、瀬畑源・長野県短大准教授は、天皇陛下が考える「象徴」の役割を指摘しています(…

進むべき道が自明だった時代。自主的思考を放棄できた時代。

あなたの周りに、孫に何でもしてあげた挙句、孫をダメにしてしまった、「優しい」おばあちゃんはいませんか。 ここでその詳細を書くのは控えますが、僕の周りには、います。しかも、一人ではありません。だからきっと、日本全国、そこらじゅうに、そんな「優…

過去に向きあう。未来を手に入れる。

当ブログの説明は「過去に向きあう。未来を手に入れる。」です。当初は「史料で日本の近現代史の再構築を。」だったのを変更しました。僕にとっては、ほぼ同じことを言っているつもりなのですが、その意味を説明します。 先日、朝日新聞のオピニオン欄に「フ…

日本精神・前編:「日本人らしさ」の源流は、満洲事変後にあった

日本人とは、何でしょう。 日本のはじまりを、かりに、農村社会が成立した弥生時代からとすれば、およそ2千年以上前となり、長い歴史があるわけですが、日本人が自分自身を日本人だとする自意識が生まれたのは、つい最近のことです。 司馬遼太郎は、幕末に…

ネバーギブアップとは、歴史的には批判されるべき悪徳

ネバーギブアップ、つまり、絶対にあきらめない、というのは、不屈の精神をあらわす美徳であるように、一般には思われています。 はたしてそうでしょうか。 日本の近現代史をみる限り、ネバーギブアップとはむしろ亡国の思想であり、決して賞賛されるべき考…

昭和18年7月の特高月報:かなり物騒だった戦時下の民衆

戦時下の民衆が必ずしも、横暴な軍に、なすすべもなく、ただ従うだけだった、というわけではない一例を、さきのブログに書きましたが、今回は日本国内の労働者の様子です。 内務省警保局保安課が、「特高月報」なるものを毎月発行していました。全国各地から…

企画院総裁・鈴木貞一の聴取書から:語られてこなかった戦時下の民衆の姿

今の日本には過去を振り返る力があるのだから、戦時中に起きたことにきちんと向き合うべき、とのカズオ・イシグロ氏の考えを出発点に前回は書きました。 これまで僕たちがきちんと向き合ってこなかったことのひとつに、当時、アジア各地で、軍人ではない日本…

カズオ・イシグロ氏の日本論から:「どん底からの逆転」神話の嘘と罪

先日ノーベル文学賞に選ばれたカズオ・イシグロ氏は、2年前のインタビューのなかで、日本は戦争という過去を忘れすぎているが、すでに「ショックに対する抵抗力の強い国」になったので、それに向き合うべきだという考えを語っています。 business.nikkeibp.…

航空燃料国産化と日米開戦:国立公文書館所蔵の知られざる聴取書群から

あまり知られていないことですが、昭和31年からおこなわれた、旧陸海軍人を中心としたヒアリングの記録が国立公文書館に保管されており、誰でも閲覧することができます。その史料について、拙著『終戦史』では、こう紹介しています。 元海軍大佐の豊田隅雄…

吉田自由党:幻の「憲法改正→1955年に再軍備」案

65年前の1952(昭和27)年、憲法を改正したうえで再軍備を行うという政策案を、当時の与党・自由党が準備していました。自由党、といっても、現在の小沢一郎のではなく、自由民主党の前身、吉田茂率いる自由党のことです。 その自由党が、サンフラン…

東條“親切”内閣

「国民に対し親切第一」と東條英機が内閣首脳への初訓示で語ったという、朝日新聞記事(昭16.10.22夕刊)。 特にお願いしたいことは「親切」ということである。ご承知の通り国民の多数が戦地において死を賭して幾多の辛苦を重ね、銃後の国民はまた一億一心、…

日本は本当にソ連参戦を知らなかったのか:その1.海軍編

2013年に僕が刊行した『終戦史 なぜ決断できなかったのか』は、その一年前に放送したNHKスペシャル「終戦」の出版化という体裁をとりながらも、放送には盛り込めなかった内容や、その後の追加取材で得られた知見、僕なりの独自解釈なども盛り込んだ内容と…

NHK・BSプレミアム「華族 最後の戦い」と、昭和天皇の退位問題

リサーチャーとして、制作にかかわった番組のお知らせです。 ドキュメンタリードラマ「華族 最後の戦い」(NHK・BSプレミアム) www.nhk.or.jp 番組では、木戸幸一、近衛文麿、そして松平康昌という3人の「華族」の、戦中・戦後を、ドキュメンタリード…